平野啓一郎さん

 憲法は、固有の意味としては、一つの国家がいかなる政治的共同体であるかを根本的に自己規定するものですが、近代の立憲主義は、更にフランス人権宣言が「権利の保障が確保されず、権力の分立が定められていないすべての社会は、憲法を持つものではない」と述べている通り、必ずしもすべてが憲法の名に値するものではないと、その必須の条件を定めています。
 この欧米の立憲主義を「普遍的」な価値として定着させようと試行錯誤してきたのが近代の歴史であり、その過程では、二度の大戦のような大きな失敗もあり、戦後、平和主義、国際協調主義が憲法に明記されるケースも登場しました。日本国憲法もその一例でしょう。
 私たちが生きる、今日の基本的人権が尊重された社会の根底にあるのは、日本国憲法です。国民として、まずはそれを知ることが大切です。