2017年1月7日土曜日

やや日めくり憲法 17条 国の損害賠償責任

日本国憲法17条   何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。


 もし、国や公共団体(具体的には、都道府県、市町村などのことですが、いろいろあるので「公共団体」とまとめておきます。)の施策が誤っていて、そのために傷付けられた人がいたら、その人は誰に責任を追及できるでしょうか。
 たとえば、過去には、国が適切な規制をしなかったために有機水銀が垂れ流されて水俣病が拡大したことがありました。
 あるいは、炭鉱ではじん肺になって苦しみもがきながら死んでいく人々が多くいました。

この人たちは国に対して責任を追及し、損害賠償せよと言えるのでしょうか。

 憲法は、17条で、「公務員の不法行為」により国や公共団体賠償をすべきであることを定めています。
 公務員の行為とは、国や公共団体の職員の行為ですから、国や公共団体の活動のことを指します。
 つまり、国や公共団体の活動によって権利を侵害された人は、国や公共団体に対して損害賠償請求を求めることができるのです。

 上に書いた、国が適切な規制をしなかったために公害で苦しむ人たちが現れた問題は、
労働者や地域の人たちに危険を強いながらお金を設けた事業主に責任があるのは当然ですが、

国が、「このまま放っておけば危ない」とわかっていながら、対策を進めず、

事業者にさせるがままの政策をとり続けたことに、責任を負うべきだとされたのです。




今、私たちは、このことを当然だと思っています。

でも、実は、世界的・歴史的にみれば、この制度は新しいものです。

ドイツやフランスでは20世紀初頭まで、イギリスやアメリカでも第二次大戦の頃まで、国による賠償責任は認められていませんでした。
大日本帝国憲法もこのような権利を定めていませんでした。
国の施策の誤りのせいで国民が傷付けられたとしても、国民は国に損害賠償を求めることはできなかったのです。

でも、これでは被害者を切り捨てることになり、不当です。
被害者を広く救済しようとする世界的な流れの中で、現行憲法17条は国家賠償責任を取り入れました。

国に対する損害賠償請求権が当然に人権の内容であると言えるか、憲法学者の中では争いがあるようです。
でも、国に損害賠償請求をすることで、私たち国民は国の誤りを追及し、正し、自分たちの権利を守ることができます。
憲法17条は、私たち国民に、自分たちを守る1つの武器を与えてくれたと言えるでしょう。

 弁護士業務をしていると、国や公共団体がを相手にして国家賠償を請求することがあります。
 そのときに「国を相手に裁判をするなんて…」とためらう方と会うこともあります。

しかし、国や公共団体が、自分たちのしたことの責任をとって賠償をするのは義務です。
 憲法を守って政治をしなくてはならないのですから。

 私たちが国や公共団体のしたことで損害を被ったら、泣き寝入りしないで賠償を求める。
 このことは、私たちの損害を回復するだけではなく、国や公共団体に責任を自覚してもらうための、「普段の努力」としての役割もあるのです。