2017年9月2日土曜日

やや日めくり憲法92条(地方自治の本旨)

第九十二条  地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。

憲法92は、地方自治について定める第8章の冒頭に置かれています。
 
  戦前の日本には「地方制度」はありましたが、「地方自治」はありませんでした。
 戦前の「地方制度」とは、
国が決めたことを、地方住民に徹底するところに主な目的がありました。
ですから、知事は地元で選ばれた人ではなく、中央から派遣された人がやりました。
中央政府からやってきた人の監督下に、地方が置かれていたのです。

しかし、これでは、その地方の重要なことを、
(往々にしてその地方のことをよく知らないし、利害関係もない)国が決めてしまい、
地元の人の意見は通らなくなってしまいます。

「いつもいつも、東京の人が勝手に決めてしまう…」

これでは民主主義国家として不十分なので、92は、
法律によっても侵すことができない、地方自治のだいじなところ
(これを、「地方自治の本旨(ほんし)」といいます)を、
制度として保障しました。

 この「地方自治の本旨」、つまり地方自治のだいじなところは何かというと、
「住民自治」と「団体自治」と呼んでいる二つのことです。

 「住民自治」というのは、
「住民の意思に基づいて地方行政を行う」ということです。

国会議員を選ぶとき、地方ごとに区切られた「選挙区」から決まった人数を選ぶ方法をとることがあるので、
結果的に、その地方の声を反映した選ばれ方になることがあります。
たとえば、衆議院議員の選挙のとき、沖縄の選挙区では、
辺野古新基地建設への賛否が争点になり、
選ばれた議員は国会で県民の声を代弁していますね。

しかし、それはあくまでも「間接的」な効果です。
地方そのものの代表(首長)を選ぶとき、地方独自の法(条例)を制定する議員を選ぶときなどは、
住民が直接、自分たちで意思表示をすることが必要です。
自分たちで選んだ代表がそのまま地方自治を担うことで、住民の声がより直接的に反映されるのです。


 次に、「団体自治」というのは、
地方自治体は国と上下関係にあるのではなく、自立した存在で、
地方行政が委ねられている、ということです。

地方を国の権力の下に置くのではなく、
権力を国と地方で分け合うという形をとり、
互いに監視しあい、一方がダメなことをしたら他方が「ダメだ」といえる関係に立ち
(こういうのを「抑制と均衡」といいます。立法・行政・司法の三権分立と一緒です)
そうすることで、権力が住民の人権を侵害するのを防ぐことができます。

これは、「権力が人の自由や権利を奪ってはいけない」という考え方に立つものですから、
立憲主義とよくなじむ考え方です。

この点、あすわかが設立の時から問題にしてきた自民党憲法草案では、
92条はどうなっているかというと…

1 地方自治は、住民の参画を基本とし、
  住民に身近な行政を自主的、自立的かつ総合的に実施することを旨として行う。

2 住民は、その属する地方自治体の役務の提供を等しく受ける権利を有し、
  その負担を公平に分担する義務を負う。



 1項は、「地方自治の本旨」のうち、住民自治ということを書き表したものです。
団体自治の要素は削られてしまっています。
また、こんなことも書いてあります。

自民党憲法草案93条2項
「国及び地方自治体は、法律の定める役割分担を踏まえ、協力しなければならない。
地方自治体は、相互に協力しなければならない。」

法律を定めるのは国会(国)ですから、
地方は、直接関与することができません。
つまり、地方は、自分たちが決めていない法律に従って、国と協力しなければならない、というのです。

地方自治を軽視していませんか?

今でも、自民党政権が、国と地方を上下関係に置いているかの如くふるまっている場所がありますね。
政府が今していることを見ると、
憲法を変えてどんなふうにしたいと考えているかを、知ることができます。