日本国憲法 逐条解説
~あすわか「やや日めくり憲法」まとめサイト~

 日本国憲法の条文を1つずつ解説した、あすわかブログの「やや日めくり憲法」。
 2017年に約1年かけて連載したものを、検索しやすくまとめました!  気になる条文を気軽に調べられますので、ぜひご活用ください。

第1章 天皇

1条〔天皇の地位と主権在民〕

2条〔皇位の世襲〕

3条〔内閣の助言と承認及び責任〕

4条〔天皇の権能と権能行使の委任〕

5条〔摂政〕

6条〔天皇の任命行為〕

7条〔天皇の国事行為〕

8条〔財産授受の制限〕

 2019年は天皇の代替わりがありましたね。天皇制について考える機会が少し増えた、という方も多いのでは。女性が天皇になれない差別的な制度だという批判も起きつつありますが、そもそも天皇制というもの自体が、特定の人と家族の人権を大幅に制約する制度、でもありますね。天皇の地位は、あくまでも「主権の存する日本国民の相違に基づく」ものなので、ぜひ一度、条文や「やや日めくり憲法」の解説など目を通してみて下さい。

第2章 戦争の放棄

9条〔戦争の放棄と戦力及び交戦権の否認〕

 侵略・虐殺、空襲・原爆…戦争の加害も被害も両方ともなめつくした国として、戦争のない世界を目指すために率先して「誰もが怖がるけれど誰かが最初にしなければならない」戦争放棄・戦力不保持の道を選びました。

第3章 国民の権利及び義務

10条〔国民たる要件〕

11条〔基本的人権〕

12条〔自由及び権利の保持義務と公共福祉性〕

13条〔個人の尊重と公共の福祉〕

14条〔平等原則〕

15条〔普通選挙・投票秘密の保障など〕

16条〔請願権

17条〔国家賠償〕

18条〔奴隷的拘束及び苦役の禁止〕   

19条〔思想及び良心の自由〕

20条〔信教の自由〕

21条〔表現の自由〕

22条〔職業選択・国籍離脱の自由など

23条〔学問の自由〕

24条〔家庭における個人の尊厳と両性の平等〕

25条〔生存権など〕

 ままならない事情で経済的に困窮する危険は、誰にでもあります。それを「弱肉強食の世界だから」「自己責任」と見捨てる世界観を、日本国憲法は明確に否定します。本人の努力ではどうにもならない貧困から救い上げ、人間らしさを保てる最低限の生活を保障することは国家の義務です(25条)。

26条〔教育を受ける権利と受けさせる義務〕

27条〔勤労の権利と義務、勤労条件の基準、児童酷使の禁止〕

28条〔勤労者の団結権・団体行動権〕

 団結権。最近は労働組合に入る人は少ないようです。労組に対する「なんか特定の政党の活動なんでしょ」的な思い込み・偏見が原因でしょうか(労組の支持政党などバラバラです、当然)。自分一人では、なかなか会社に物申すことはできません。自分らしい生活を守るために、労組への加入って大事です。

29条〔財産権〕

30条〔納税の義務〕

31条〔生命及び自由の保障と科刑の制約〕

 日本国憲法は、被疑者や被告人の人権を他国の憲法に比べて手厚く保障してます。それ以前、いかに恣意的な身柄拘束・暴力的な捜査・拷問が横行していたか、そしていかに「二度とそんな国になるものか」という意識が強かったか分かります。「突然、冤罪で逮捕」という可能性は誰にでもあるので、決して「犯罪者の人権=自分と無関係」ではありません。

32条〔裁判を受ける権利〕

33条〔逮捕の制約〕

34条〔抑留・拘禁の制約〕

35条〔侵入・捜索・押収の制約〕

36条〔拷問及び残虐な刑罰の禁止〕

37条〔刑事被告人の権利〕

 「犯罪者に人権なんかないでしょ」と、とかく軽視されがちなのが被疑者・被告人・受刑者の人権です。近代以降の民主主義国家は、リンチ(私刑)という野蛮な発想を捨て、理性で裁く道を選びました。どんな極悪な犯罪者も人間である以上、人権があり「踏みにじっていい存在」ではありません。

38条〔自白強要の禁止など〕

39条〔遡及処罰、二重処罰等の禁止〕

40条〔刑事補償〕

第4章 国会

41条〔国会の地位〕

42条〔二院制〕

43条〔両議院の組織〕

44条〔議員及び選挙人の資格〕

45条〔衆議院議員の任期〕

 GHQ草案では一院制だったところを帝国議会が修正し、日本国憲法では、貴族院でもなければ地域代表的な性格も持たない、「参議院」を第2院としました。2つの議院の選挙の時期をズラす(しかも参議院は3年ごとの半数改選)ことで、議席に反映される“民意”にズレが生じます。熟慮でき、軽率な数の暴走を防ぐ知恵です。

 「ねじれ国会」という言葉は、なんだか「ねじれ」が悪いことのような印象を与えがち。でも、衆議院と参議院とで政党や議員の勢力分布にズレがあるからこそ、国会の暴走を食い止められるし、とことん議論できるのです。つまり、憲法は「ズレ」や「ねじれ」を当然の前提にしているのであって、「ズレてて当たり前」くらいなのです。

46条〔参議院議員の任期〕

47条〔議員の選挙〕

48条〔両議院議員相互兼職の禁止〕

49条〔議員の歳費〕

50条〔議員の不逮捕特権〕

51条〔議員の発言表決の無答責〕

52条〔常会〕

53条〔臨時会〕

 2015年に安倍内閣が臨時国会の召集をしなかったことは、忘れられない重大な憲法違反でした。衆議院でも参議院でも4分の1以上の賛成があったにもかかわらず、国会は召集されず。自民党改憲草案で「要求があったときから20日以内」に召集が決定されなければならない、と定めているくせに…!

54条〔総選挙、特別会及び緊急集会〕

55条〔資格争訟〕

56条〔議事の定足数と過半数議決〕

57条〔会議の公開と会議録〕

58条〔役員の選任及び議院の自律権〕

59条〔法律の成立〕

 法律の制定の場面で、衆議院は参議院に優越します。でも「数の力」に任せて、どんなに参議院が反対していても無視していい、というわけではまったくありません。衆議院の暴走を防ぐための二院制ですから、参議院が衆議院と別の結論を出したときは、衆議院は重く受け止めなければなりません。双方が納得する結論に至るための両院協議会も開けるようになっていて、国会議員にとことん“対話”が要求されています。

「参議院が否決?じゃあ衆議院で再議決すればいいや」という態度の人に、民主主義の政治を預けてはいけない、ということです。

60条〔衆議院の予算先議権及び予算の議決〕

61条〔条約締結の承認〕

62条〔議院の国政調査権〕

 内閣(政府)にしっかり対峙できるように、国会に与えられた国政調査権(62条)。しかし多くの議席を占める与党が政府と一体となって“翼賛”してしまうと、国民の疑問に答えるための証人喚問や記録の提出も拒まれ、国政調査権が正常に発動できません。そんな横暴は許さない、という世論が不可欠です。

63条〔国務大臣の出席〕

64条〔弾劾裁判所〕

第5章 内閣

65条〔行政権の帰属〕

66条〔内閣の組織と責任〕

67条〔内閣総理大臣の指名〕

68条〔国務大臣の任免〕

69条〔不信任決議と解散又は総辞職〕

70条〔内閣総理大臣の欠缺又は総選挙施行による総辞職〕

71条〔総辞職後の職務続行〕

72条〔内閣総理大臣の職務権限〕

73条〔内閣の職務権限〕

 「官吏に関する事務の掌理」は内閣の権限の1つ(73条4項)。つまり公務員の事務が公正・公平に行われているかの管理監督責任。公文書の改ざん、統計の組織的な改変、白々しいウソの答弁の繰り返し…クズクズな事務で民主政治の土台が壊れたのは、内閣の責任です。官僚の処分では済まされません。

74条〔法律及び政令への署名と連署〕

75条〔国務大臣訴追の制約〕

第6章 司法

76条〔司法権の機関と裁判官の独立〕

 行政や法律が憲法上許されるのか、冷徹に裁く第三者「司法権」。裁判所という組織(司法権)が国会・内閣から独立していることと、個々の裁判官の独立が保障されていることは、権力をしばり、権力の暴走を防ぐために必要不可欠なことです。「政治への配慮」なんて忖度はあってはなりません。

77条〔最高裁判所の規則制定権〕

78条〔裁判官の身分保障〕

79条〔最高裁判所の構成及び裁判官任命の国民審査〕

80条〔下級裁判所の裁判官〕

81条〔最高裁判所の法令審査権〕

82条〔対審及び判決の公開〕

第7章 財政

83条〔財政処理の要件〕

84条〔課税の要件〕

85条〔国費支出及び債務負担の要件〕

86条〔予算の作成と国会の議決〕

87条〔予備費〕

88条〔皇室財産及び皇室費用〕

89条〔公金の支出〕

90条〔会計検査〕

91条〔財政状況の報告〕

第8章 地方自治

2条〔地方自治の本旨〕

 地元のことは地元の住民たちが決め(住民自治)自治体は政府の下部組織ではなく独立した存在として自治を担う(団体自治)。この2つが地方自治のエッセンス。いくら政府がその県に米軍基地を作ろうと強行しても、県という権力も憲法尊重擁護義務を負い、住民の人権を守るべく政府に対峙するのです。

93条〔地方公共団体の機関、その直接選挙〕

94条〔地方自治の特徴〕

95条〔一の地方公共団体のみに適用される特別法〕

第9章 改正

96条〔憲法改正〕

 自由・平等・民主主義など普遍的な価値が宣言された憲法を、安易に「時の権力」や勢いによって変えられることがないよう、厳しい手続きが定められています。

第10章 最高法規

97条〔基本的人権の由来特質〕

98条〔憲法の最高性と条約及び国際法規の遵守〕

99条〔憲法尊重擁護の義務〕

 憲法は、主権者国民が、権力に突きつけ、権力をしばるものです。 

 この第10章にある3つの条文の「連なり/順序」はとても意味あります。3つまとめて読めば、そのメッセージ性が分かります。すなわち、人権がなによりも尊いものだからこそ、人権保障を定めるこの憲法がこの国の“最高法規”であり、憲法に違反する法律はすべて無効なのだ、と。だから権力を持つ者は憲法尊重擁護義務を負うのだ。

 立憲主義というものの考え方が、とても分かりやすく書かれていることが分かります。

 (この点、2012年に発表された自民党の改憲草案が「97条は11条と同じようなものなので削除」と提案されていることを思い出して下さい。第10章の条文の連なりの意味をまったく理解できていないことが分かるかと思います。)